■調停者ミスタ■ 北に位置する大国アルフローレン。 西に位置する武装国家ソーホ。 そしてその両国に挟まれる小国キレ。 二国間での争いが絶えず、キレの国王は頭を悩ませていた。 どちらについても争いは避けられないのである。 ある日、アルフローレンから使者がやって来た。 「ソーホに進撃するゆえ、貴国の領土の通過を願いたい」 これは間接的にアルフローレンに手を貸すのと同義である。 国力で劣るとはいえ、強力な武装歩兵団を擁するソーホを 易々とは攻略出来ないであろう。まかり間違えばソーホの刃はキレに向く。 しかしこの要請を断れば刃の種類がアルフローレンに変わるだけだ。 返答に窮したキレの国王はロイアスの王、ミスタに仲介を求める。 ミスタは両国に挟まれているキレという国の重要性を説こうと考え、策を設けた。 ロイアスの遊説家を使い、両国で異なる二つの噂を流したのである。 「ソーホはキレと謀りアルフローレン軍を通した後、挟み打ちにするつもりだ」 「アルフローレンはキレを吸収し、北のノースランドとの二面攻撃をするつもりだ」 両国の軍がキレの国境線に殺到する。 だが両国を待ち受けていたのは互いの軍ではなく、ミスタ率いるロイアス軍であった。 大陸中央のロイアスは交易の拠点であり、人材・物資共に豊富なロイアス軍を 向こうに回すのは両国としても避けたい所である。 ロイアスはキレの後ろ盾を誇示し、互いの不利益を自覚させられた両国は キレから手を引かざるを得なかった。 ミスタは万事この調子で争乱を未然に防いでいたのである。 そして齢70になる頃、ロイアスとその周辺国で会合が持たれた。 各国の王が列席するとあって、誰が議長を務めるかが注目されたが 満場一致でミスタが推挙された。年齢と在位年数の長さもあるが 何よりミスタが盟主としてふさわしいと、その場にいる誰もが認めていたからである。 END